大納言メモ

好きな事について気楽に書いていきます。

遺産は保存か?破壊か?

こんにちは!

ついに梅雨が明けて8月になりました!

とても暑いですね・・・

 

8月になると、テレビでは終戦記念日にちなんで、戦争の体験談を語るドキュメンタリーやドラマが放送されますね。

たまに見ます。

 

昨日も深夜に、ある戦争体験を語るドキュメンタリー番組が放送されていました。

私は途中からでしたが、さらっと見させてもらいました。

今日は少しその話をしたいと思います。

 

 

内容は、広島にある煉瓦造りの古い建物を保存するかどうか、というものでした。

その建物は、陸軍被服支廠の跡で、戦時中は軍服や靴を作っていたところだそうです。

番組には、当時被服支廠で働いていた女性が登場し、その頃の広島の様子を語ってくれていました。

 

被服支廠跡は煉瓦造りであったため、原子爆弾の爆風による倒壊は免れましたが、現在は崩落の危険があるため、保存するためには耐震工事が必要です。

莫大な費用をかけて保存をするのか、それとも破壊して別の土地利用をするのか・・・

地元でも意見が割れているようでした。

 

ある地元住民は、「原爆ドームがあるのだからこれはいらない」「(原爆ドームから距離があるため)ここまで見に来る人はいない」と述べていました。

 

全国どこもそうですが、遺産の保存問題にはどうしても地元と世間とでギャップが生まれるような気がします。

歴史好きから見れば「保存するに決まっている」と思う遺産であっても、地元民から見れば「破壊に決まっている」と。

そしてその逆もあるだろうと思います。

観光でたまに行く人と、常に生活圏に遺産が入ってくる人とでは考えが違うのは当たり前なのかもしれません。

負の遺産であればなおさらです。

それに、文化財となると保護義務が発生します。

保護していかなければならないのは地元住民なんですよね・・・

 

普通この手の番組は、「戦争を忘れてはならない」という趣旨で制作されると思うので、遺産の保存派にばかりフォーカスすると思いましたが、反対派(破壊派)の意見も取り入れていて、文化財の認定や保護が一筋縄ではいかない様子を見られて興味深いなぁなんて思いながら視聴していました。

 

ところで、先ほどの被服支廠で働いていた女性はどっち派なのだろうと気になるところですが、彼女は保存派でした。

「思い入れが強いのだから当然だろう」と思われるかもしれませんが、ただ思い出を残すために保存を主張している訳でもなければ、原爆を知る数少ない遺産だから・・・という理由だけでもありません。

 

その女性はインタビューで「軍都」という言葉を何度か使用していました。

「軍都」とは、軍の司令部や兵舎、工場などが集中して立地する都市のことを指します。

広島は明治維新以降、鎮台(師団)がいち早く置かれ、日清戦争時には、広島城に臨時の大本営が移転。港からは大陸へ多くの兵員や物資が送り込まれるなど、国内の前線基地として機能し、太平洋戦争まで着々と軍都の体裁が整えられていきました。

 

そんな広島に新型爆弾が投下されました。

軍需工場が集中していることが広島選定の理由の一つであったそうです。

 

 

それらを踏まえた上でその女性は保存派の立場をとります。

陸軍被服支廠は原爆の被害者としての悲惨さだけを伝えるものではない。

なぜなら、被服支廠は軍都広島にあった軍需工場の一つであり、原爆投下までは加害者の立場にもなりうる存在であったから・・・

 

確かに、これまで原爆ドームを見るとき、「こんな悲劇を二度と起こさせない」という被害者の立場で語られることが多く、広島が軍都であったことにはあまり触れられていないような気がします。

もちろんそれが悪いということではありません。(そもそも原爆ドームは軍需工場などではないので)

実際に、広島の人々は戦争の被害者でもあるし、人類史上最初の核兵器使用の被害者でもあることに間違いありません。

ただ私は、自分の想像していなかった意見を聞けたことに加えて、当事者がそのような発言をしていることに心を大きく揺さぶられましたし、考えさせられました。

被害者の遺産でもあれば、加害者の面も持つ遺産である。

遺産の持つその両面を語り継ぐべきである。

そういう考え方があるのだなと・・・

 

 

 

私は、被服支廠跡には、原爆ドームとは異なる意味合いがあり、存在意義のある建物なのではないかと思いました。

みなさんはどうお考えになりますか。

三棟あるうち一つだけを残す・・・とか様々な案があるようですが、行政はどのように判断するのでしょうか。

今年度中には結論がでるみたいなので注目したいと思います。

 

 

それでは今日はこの辺で!

ありがとうございました。